コンクリート表面にひび割れが確認される場合に、そのひび割れの深さをiTECS法により測定します。
ひび割れ部の近傍でコンクリート表面をインパクターにより打撃すると、コンクリート内部を 伝搬し、ひび割れ先端を回折する弾性波が発生し、表面に最も速く到達します。
表面に最も速く到達する弾性波の種類は、ひび割れ先端を回折するときの角度θによって変化します。急に変化する境界を「臨界」といいます。ひび割れ先端から回折する波は、ある角度で性質の異なる波に変化します。このときの角度を「臨界角」と呼び、角度θ<臨界角の場合には引張波、θ>臨界角の場合には圧縮波となります。コンクリートの臨界角は約90°です。
また、コンクリート表面に設置したセンサーで、表面に最も速く到達する弾性波を測定すると、引張波は下に凸形状、圧縮波は上に凸形状と測定波形は変化します。
以上の性質から、センサーの測定波形の第1波に着目すれば、以下のとおり判断できます。
下に凸形状⇒θ<臨界角
上に凸形状⇒θ>臨界角
コンクリートのひび割れ深さ測定の適用条件として、以下の①~③の条件を全て満たすコンクリートに対して適用されます。
- 測定面となるひび割れが開口している面の幅・長さが想定されるひび割れの深さよりも十分に長いこと
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ひび割れ内部に水等が充填されていないこと
ひび割れ内部が一部密着している場合やエフロレッセンスによる析出物で埋まっている場合では、これらの影響を受け、これらの位置までの深さを測定してしまいます。 -
ひび割れ深さが鉄筋のかぶり厚さより深い場合
鉄筋を経由する弾性波が発生し、測定深さが実際の深さより浅くなる場合があります。
コンクリート構造物に発生するひび割れは、構造物の耐力・耐久性・防水性など、諸機能を低下させる主要な原因となります。
ひび割れには、コンクリートの硬化過程で生じる初期ひび割れと、供用中の荷重に伴うひび割れ、劣化に伴うひび割れなど多くの種類があります。 また、ひび割れには許容できるひび割れと、進行性があり劣化につながる有害なひび割れがあります。
ひび割れ幅はコンクリート表面で目視によって確認出来ますが、ひび割れ深さは採取したコアから確認したり、または非破壊試験によりひび割れ深さを測定したりして確認します。
ひび割れ深さを知る事で、ひび割れが鉄筋位置まで達しているか、今後の劣化の進展予測や維持管理・補修に役立てることができます。