社会資本施設の維持管理の必要性 道路やトンネル,橋梁,港湾,上下水道といった社会資本施設は,国民の安全や豊かな暮らしを担保する重要な役割を担い,あらゆる産業と経済活動における下支えと位置付けられる。また,近年激甚化する自然災害や,切迫する大地震の脅威に対し,防災・減災の観点でもその機能に期待する部分は大きいと言える。しかしながら,これらの社会資本施設は整備するだけでなく,適切な維持管理を施しながらできる限り長く供用していくことが不可欠である。 国土交通省の第5次社会資本整備重点計画では,「持続可能なインフラメンテナンス」として予防保全型の維持管理体制に向けた施策が提唱されており,非破壊試験手法等,新技術の活用によるインフラメンテナンスの高度化や効率化も課題として挙げられています。 社会資本施設の老朽化と予防保全型維持管理への転換 国土交通省によると(社会資本の老朽化の現状と将来 - インフラメンテナンス情報※1)),わが国で高度経済成長期に集中的に整備された社会資本施設が急速に老朽化することが懸念されています。下表に示すように,2033年には,道路橋,トンネル,河川管理施設,港湾岸壁といった施設の半数程度以上が,建設後50年を迎えると言われています。また,国土交通省の推計によると,従来のように施設に不具合が生じてから補修・補強を行う,いわゆる事後保全型の維持管理を行う場合と,不具合が生じる前に修繕を行う「予防保全」型の維持管理を実施する場合,維持管理コストを50%程度抑えられるというデータもあり,今後,社会資本施設は「予防保全」型の維持管理を行っていくことが不可欠になります。 ※1):https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01.html 維持管理にかかわる財源や技術者の不足 国土交通省では,予防保全型の維持管理の施策として平成26年から,道路橋について5年に1回の頻度で統一的な基準による近接目視調査を実施しています(道路法施行規則)。その結果,約71万橋のうち10%程度が早期に対策を講じる必要がある状態であることが判明しました。しかしながら,地方公共団体が管理する橋梁では,約66%が対策を講じられていない状況です。この背景には土木技術者の減少や不足,財源不足が挙げられています。 図 橋梁点検における判定区分 ※1) 図 橋梁における修繕措置の実施状況 ※2) 図 市区町村における橋梁保全業務に携わる土木技術者数 ※3) ※1)道路メンテナンス年報 国土交通省道路局※2)橋梁等の2019年度(令和元年度)点検結果を取りまとめ 国土交通省道路局 国道・技術課※3)令和2年度国総研講演会資料 予防保全型の維持管理と非破壊試験 国土交通省では,社会資本施設の維持管理について,予防保全型の維持管理への転換することが提唱※1)され,例えば道路橋は,5年に一度の点検が行われています。しかしながら,コンクリートの変状の種類によっては,目視で変状が確認できる時点では,劣化の進行が著しく,すでに手遅れという事例もあります。例えばPC鋼材の腐食による破断などです。 このため,目視で確認しづらい変状(あるいはその兆候)の早期検知のためには非破壊試験手法の活用が不可欠であり,予防保全型の維持管理を遂行する上で重要な役割を担います。 iTECS法も,PC鋼材の腐食の主要因であるPC橋梁のグラウト充填不足の検知やひび割れ深さ測定,桁全体の健全性の評価といった,予防保全型の維持管理に必要な情報を収集することが可能です。 ※1)インフラ長寿命化計画 国土交通省 iTECS技術協会の各種申込書類・問い合わせフォームについて
道路やトンネル,橋梁,港湾,上下水道といった社会資本施設は,国民の安全や豊かな暮らしを担保する重要な役割を担い,あらゆる産業と経済活動における下支えと位置付けられる。また,近年激甚化する自然災害や,切迫する大地震の脅威に対し,防災・減災の観点でもその機能に期待する部分は大きいと言える。しかしながら,これらの社会資本施設は整備するだけでなく,適切な維持管理を施しながらできる限り長く供用していくことが不可欠である。
国土交通省の第5次社会資本整備重点計画では,「持続可能なインフラメンテナンス」として予防保全型の維持管理体制に向けた施策が提唱されており,非破壊試験手法等,新技術の活用によるインフラメンテナンスの高度化や効率化も課題として挙げられています。