コンクリートの圧縮強度と非破壊試験について コンクリートの圧縮強度について コンクリート強度の特性値は、圧縮強度、引張強度、曲げ強度、せん断強度等があります。 コンクリート構造物は、一般に圧縮強度に基づいて設計され、また、コンクリート構造物の品質を管理していく上で、圧縮強度を把握する事は極めて重要です。 圧縮強度を調べる方法には、2通りあります。 ①採取したコンクリートコアの強度から求める方法(「JIS A 1107:2012コンクリートからのコアの採取方法 及び圧縮強度試験方法」) ②作製された円柱供試体(「JIS A 1132:2020 コンクリートの強度試験用供試体の作り方」)を使用し、強度試験から求める方法(「JIS A 1108:2018 コンクリートの圧縮強度試験方法」) ①は、既設構造物の耐久性診断や耐震診断等に行われ、②は、レディーミクストコンクリートの受入れ時の検査を目的に行われます。 現状では、圧縮強度の確認はコアによるものが主流となっています。しかしながら、場所の制約や破壊によるものなので、箇所数に制限があるのが問題です。このため非破壊試験によるコンクリートの強度測定に期待が高まっています。 コンクリートの圧縮強度と非破壊試験の背景について コンクリートの圧縮強度の管理について、我が国では、平成11(1999)年に発生した福岡トンネルコンクリート塊落下事故をきっかけとし、コンクリート構造物の劣化や品質の問題が社会的問題となりました。 このような状況を踏まえ、当時の建設省、運輸省、農林水産省が「土木コンクリート構造物耐久性検討委員会」を設置し、「土木コンクリート構造物耐久性検討委員会の提言」が平成12(2000)年に報告されました。 報告された提言を元に国土交通省では、微破壊・非破壊についての通知文が出されています。(「微破壊・非破壊試験によるコンクリートの強度測定を用いた品質管理について(案)」(平成21 年3 月31 日付け国官技第344 号)※1) ※1 「微破壊・非破壊試験によるコンクリートの強度測定を用いた品質管理について(案)」 コンクリート圧縮強度の非破壊試験法について 平成13年(2001)年に国土交通省が公示した通達「土木コンクリート構造物の品質確保について(国官技第61号 平成13年3月29日)」により、コンクリートの圧縮強度は、テストハンマーによる測定が行われています。 平成18(2006)年では、コンクリート構造物の品質確保を一層図るとともに、監督・検査の充実を目的として、新たに3種類の非破壊試験による圧縮強度測定が始まりました。 ①衝撃弾性波法(iTECS法) ②衝撃弾性波法(表面2点法) ③超音波法 上記3種類の非破壊による圧縮強度測定については、国土交通省から「微破壊・非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定要領」※2及び、「微破壊・非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定要領(解説)」※3が公示されています。 ※2 微破壊・非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定要領 ※3 微破壊・非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定要領(解説) iTECS法によるコンクリートの圧縮強度試験の原理について iTECS法 規格 試験01:新設コンクリート構造物の圧縮強度試験方法 測定対象のコンクリートの内部を伝搬する弾性波の速度を測定することでコンクリートの圧縮強度を推定します。 コンクリート内部を伝搬する弾性波速度とコンクリートの圧縮強度との間には、同一配合であれば強い相関関係があります。つまり、この相関関係を利用して、iTECS法により測定した弾性波速度からコンクリートの圧縮強度を推定します。 iTECS法による新設コンクリート構造物の圧縮強度試験方法 1 コンクリート打設時に円柱供試体を複数作成し、これら供試体における圧縮強度と弾性波 速度の関係から強度換算(あるいは推定)式を求めておきます。 2 コンクリート構造物の任意の場所において、iTECS法により弾性波速度を測定します。 3 構造物で求めた弾性波速度と強度換算式から圧縮強度を推定します。 推定精度 新設コンクリート構造物でiTECS法により推定した圧縮強度と、コア採取による圧縮試験結果を比較した結果は、図-1.2のとおりです。推定圧縮強度と圧縮試験結果図-1.2より、iTECS法を用いた場合、概ね±15%以内の誤差で圧縮強度の推定が可能となります。 ※本測定内容は国土交通省「微破壊・非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定要領」に基づきiTECS法として試行導入されています。 国土交通省ホームページ (独)土木研究所ホームページ 衝撃弾性波試験(仮称)iTECS 法による新設の構造体コンクリート強度測定要領(案) iTECS法による既設コンクリート構造物の圧縮強度試験の試み 現在では、既設のコンクリート構造物での維持管理には、コア採取による圧縮強度試験やコンクリート表面の反発度から強度を推定する方法などが採用されています。そこで、iTECS法による既設構造物にも適用可能な圧縮強度の推定方法について検討しています。 iTECS法による既設コンクリート構造物の圧縮強度推定方法の検討 新設構造物の建設時に66 種類の配合のコンクリートで円柱供試体を12 本ずつ作製し、これらの円柱供試体に対して、SIA-T-01 で規定される手順により弾性波速度と圧縮強度の測定が行われました。66種類の配合の全円柱供試体で得られた弾性波速度と圧縮強度の関係式を(1)に示します。 fc=1.224×10-17×VP5.129 (1) これらの結果から、既設構造物にも適用する規格が進められています。 その他のコンクリートの圧縮強度測定 iTECS法以外にも、以下の手法が強度測定要領として実施されている。 表面2点法 表面2点法による圧縮強度推定は、iTECS法と原理を同じとするが、30cmの間隔で取り付けられた器具を使用するという違いがある。 間隔30cm に設置されているセンサをコンクリート表面に設置し、近傍を打撃することにより弾性波を発生させます。発生した弾性波が、2点のセンサを通過する時間差によって弾性波速度を求め、強度換算式から圧縮強度を推定します。 衝撃弾性波試験 表面2点法による新設の構造体コンクリート強度測定要領(案) 超音波法 表面を打撃する衝撃弾性波法(iTECS法、表面2点法)は一般的に20kHz以下の周波数成分を使用するのに対し、超音波法では20kHz以上の周波数帯域を使用します。 圧電効果を使用した発信探触子の振動により弾性波を発生させ、受信探触子により受信されます。発信と受信の時間差によって弾性波速度を求め、強度換算式から圧縮強度を推定します。 また、構造物に効率よく伝達させる為の接触媒質が必要となります。 超音波試験(土研法)による新設の構造体コンクリート強度測定要領(案) iTECS技術協会の各種申込書類・問い合わせフォームについて
コンクリート強度の特性値は、圧縮強度、引張強度、曲げ強度、せん断強度等があります。
コンクリート構造物は、一般に圧縮強度に基づいて設計され、また、コンクリート構造物の品質を管理していく上で、圧縮強度を把握する事は極めて重要です。
圧縮強度を調べる方法には、2通りあります。
①は、既設構造物の耐久性診断や耐震診断等に行われ、②は、レディーミクストコンクリートの受入れ時の検査を目的に行われます。
現状では、圧縮強度の確認はコアによるものが主流となっています。しかしながら、場所の制約や破壊によるものなので、箇所数に制限があるのが問題です。このため非破壊試験によるコンクリートの強度測定に期待が高まっています。